お客様からよく尋ねられる特殊清掃の費用について
「特殊清掃の費用」についてお答えする前に、まず業者ごとの施工方法・スタイルについてご説明します。
特殊清掃の種類
特殊清掃と一口に言っても、その目的や対象はさまざまです。一般的に認知されているのは「孤独死」への対応ですが、その他にも「ペット臭の除去」「火災後の消臭」「水害後の消臭」「ゴミ屋敷の消臭」、さらにはカビやウイルスの除去など、多岐にわたります。
弊社では、これらすべてに対応できることを「特殊清掃業者」の条件と捉えていますが、それぞれ施工工程は異なります。
施工費用が最も高額になるのは火災消臭です。次いで「水害」「ペット」「孤独死」の順になると、経験上感じています。特に「火災」「水害」は臭気源となる物質の特定が難しいことが、費用を押し上げる大きな理由のひとつです。
たとえば火災の場合、「何が燃えたすすなのか」を特定するところから施工準備が始まります。臭いには距離における「m」や音における「デシベル」のような客観的な単位がありません。そこで活用するのが成分分析機です。何が燃えて、どのような成分が検出されたかを一つひとつ特定し、対処していきます。この成分分析機は非常に高額で、レンタル料だけで1分析あたり約20万円近くかかります。そのため「火災」「水害」の施工費用は最も高く、百万円単位になることも珍しくありません。
ペット臭除去の場合
ペット臭の除去においても、犬と猫では対応が異なります。猫のアンモニア臭は人間の50倍とも言われており、水分がある状態では「酸性」ですが、乾燥すると「アルカリ性」、正確には「アルカリ塩」という物質に変化します。それぞれの状態に応じた薬品での対応が必要です。
犬の場合は、雄と雌で費用が変わります。雄は足を上げて排尿するため、臭気源が壁面にまで及ぶことが多く、雌に比べて除去作業の範囲が広くなる分、費用も高くなる傾向があります。また、費用は臭気源の範囲・箇所・建材の素材によって大きく変わります。
孤独死の特殊清掃について
最もご依頼が多い「孤独死」に対する特殊清掃の施工水準と費用についてご説明します。
まず、よくある誤解についてお伝えします。孤独死だからといって、家財の搬出費用が高額になることはありません。 一部の業者は心理的瑕疵を費用に上乗せしているようですが、プロの特殊清掃業者・一般廃棄物処分業者であれば「臭いがあるから割増し」ということはありませんのでご注意ください。
ただし、衣類などは通常であればリサイクルで処分費がかからないものでも、孤独死の場合は臭いが強くリサイクル業者に受け入れを断られるため、一般の遺品整理より処分費が高くなる場合があります。また、靴カバーや医療用手袋などの消耗品費が別途発生します。
孤独死の特殊清掃には、大きく分けて3つの施工タイプがあります。
① 現象対応型
最も業者数が多く、安価な施工を行う反面、消費者トラブルや弊社への「やり直し施工」依頼が最も多いタイプです。
このタイプの業者は、家財・遺品を撤去した後、下処理を一切行わずにオゾン燻蒸だけを実施して料金を請求します。見積書には「オゾン燻蒸1台・1回○万円」と記載されていることが多いですが、専門業者の立場からすると、これは「詐欺行為」に近いと感じることもあります。
お客様が求めているのは「オゾン燻蒸」ではなく「消臭」です。下処理を行わずにオゾン燻蒸を何度繰り返しても、臭気の除去はできません。中・重度の現場で1回の施工で臭気が除去できることはなく、また3LDKほどの広さをオゾン燻蒸機1台・1日で消臭する技術は、現在の日本では確立されていません。3LDK以上の間取りには、複数台・複数回のオゾン燻蒸が必要です。
下処理が不十分なままでのオゾン燻蒸は効果が極めて低く、費用がかさむことに根負けしたお客様が、納得できないまま泣き寝入りするケースも少なくありません。広島・島根・山口県周辺では「オゾン燻蒸1回3万円」で施工する業者が多いと認識していますが、悪意の有無を問わず、不完全な消臭行為は不法行為であると考えています。
オゾン燻蒸はあくまで最終工程のツールのひとつに過ぎず、オゾン燻蒸だけで消臭が完結することはありません。
② 解体・リフォーム型
臭気源や「臭気が付着していると思われる」建材を一気に解体していく施工方法です。リフォーム業者や大工経験者が在籍する事業者に多く見られ、特殊清掃の専門知識がなくてもある程度の臭気除去は可能です。
ただし、光触媒などを施工に組み込み、高額な見積りを提示する業者も散見されます。光触媒とは、光を吸収する物質を塗布し、化学反応によって細菌や臭い成分を分解する施工方法ですが、私見では、適切な下処理が行われていなければ効果は期待できないと考えています。また「即効性がない」という点も大きなデメリットです。
このタイプは現状回復(リフォーム)費用が高額になる傾向が強いとも感じています。昨年10月に他社との4社相見積もりとなった3DK案件では、解体リフォーム型業者の提示金額は140万円でした。他社の多くは70万円前後と弊社とほぼ横並びであり、その差には耳を疑いました。お客様からは「施工金額がいくら安くても、臭気が除去できなければお金を捨てるようなものだ」との言葉もいただきました。
これはあくまで私見であり、各業者の施工方法を否定するものではありませんが、私が考える特殊清掃とは「破壊による消臭」とは異なるものです。
③ 原因対策型
特殊清掃における「臭い」は、あくまで現象です。現象対応型でトラブルが多発するのは、臭気源——つまり臭いの根本原因——への対処が「行われていない」もしくは「不十分な下処理」にとどまっているからです。
臭いはその成分を洗浄・分解・除去しない限り消えません。これは化学の応用であり、安易に建材を解体していく行為は、弊社が目指す「消臭」とは異なります。それが「下処理」の本質です。
以前のブログでもお伝えしましたが、弊社では完全な消臭を実現するための施工工程の90%をこの下処理に費やしています。他社がユニットバスを撤去するケースでも、弊社は残すことを前提に施工を進めます。原因さえ掴むことができれば、対処法はいくらでもあるものです。
季節によって費用は変わります
施工工程は厳冬期と夏場で異なり、厳冬期のほうがコストも施工期間も長くなります。
理由のひとつは、施工完了後の「臭い戻り」の確認作業にあります。臭気は微生物・雑菌・カビが繁殖することで発生しますが、厳冬期や低温期にはこれらの活動が弱まり、臭いが薄い環境になります。そのため、施工時には問題がなくても、梅雨の時期に臭いが戻ってくる事例が毎年多く見られます。実際に梅雨の時期になるとゴミ屋敷の消臭依頼が増える傾向があります。
臭い戻りの確認を行うためには、室内を夏場と同様の温度環境に近づける必要があります。たとえば室温が2℃の場合、28℃まで室温を引き上げる作業が必要です。1Kであればファンヒーター2台、1LDKであれば3台が必要になることもあります。
ただし、室温が上がっても安心はできません。臭気源となっている箇所の温度も十分に上昇しなければ、正確な臭気確認はできないためです。また、ファンヒーターを使用する以上、無人での稼働は危険なためスタッフを常時待機させる必要があり、一酸化炭素中毒のリスクを避けるため定期的な換気・退室を繰り返しながら室温を28℃まで維持する作業には、およそ4時間を要します。
弊社が目指す特殊清掃は、現状回復費用(リフォーム費用)を考慮しながら、できる限りコストを抑えつつ、臭気を完全に除去することに重きを置いています。
費用の目安(家財処分費を除く)
特殊清掃の価格は施工方法によって大きく異なりますが、アバウトな目安として参考にしていただければ幸いです。
1ルームのケース(家財処分費を除く)
現象対応型
オゾン燻蒸1回 33,000円 + 労務費 40,000円(1人あたり約20,000円)
合計:約70,000円前後
リフォーム型
室内資材撤去・解体一式 120,000円 + オゾン燻蒸1回 33,000円 + 労務費 80,000円
合計:約18万円〜23万円
原因対策型
室内資材の最小限撤去・解体 2〜5万円 + オゾン燻蒸(回数により変動)
弊社の直近実績:最安値 30,000円 / 最高値 250,000円
現状回復(リフォーム)費用について
現象対応型では残臭が強いため、リフォーム自体が困難となり、物件オーナーが着手できない事案も散見されます。
リフォーム型では、2025年現在、1Rの物件で270万円を超えるリフォーム費用が発生した事例があるとも聞いています(大工・内装業者からのヒアリングによる情報)。
原因対策型では、施工範囲によって最低20万円〜最高150万円程度とバラつきがあり、一概に基準を示しにくいのが実情です。
まとめ
以上のように、特殊清掃と一口に言っても、施工方法・工程・工期によって費用は大きく異なります。また、孤独死の特殊清掃においても、季節・建物の構造・室内環境・腐乱期間・故人様の体格・亡くなられた場所など、さまざまな要因が絡み合います。遺品整理のように物量で明確な基準を設けることが難しく、「いくらかかるか」を一概にお伝えしにくいのが正直なところです。
特殊清掃業者のスキルはさまざまです。真摯に取り組む業者がいる一方で、そうでない業者も存在します。また、真剣に取り組んでいても結果が出せない業者や、不完全な消臭で自己満足しているケースも見受けられます。
プロの特殊清掃業者に求められるのは「消臭」の結果のみです。プロセスは各社で異なっていても構いませんが、最終的に結果を出せるかどうか——そこにコストのバランスが伴ってこそ、お客様の満足につながると考えています。
また、近年はリフォームにかかる費用が信じられないほど高騰しています。使用する建材のグレードによっても費用は大きく変わりますので、その点も念頭に置いていただければ幸いです。