「遺品整理」できない・しにくい品々
天寿をまっとうされた方、志半ばで人生を終えられた方など、さまざまな形で逝去された故人様の遺品整理を行っています。
その中で、業者として一般廃棄物・産業廃棄物として処分できないもの、処分に悩まれることの多いものについてご案内します。
ワシントン条約について
まず、ワシントン条約をご存じでしょうか。
ワシントン条約とは、国際自然保護連合が中心となり、絶滅危惧種などの商取引を抑制するために1972年の国連人間環境会議で定義され、翌1973年にワシントンD.C.で採択、1975年7月1日に発効した条約です。日本は1980年に締結しています。現在、日本では環境省が「種の保存法」を主体とし、商取引については経済産業省が「外国為替及び外国貿易法」に基づき規制・管理を行っています。
主に絶滅が危惧される種の商取引を規制する条約であり、対象は動物約5,950種・植物約32,800種にのぼります。
ワシントン条約に違反した場合、条約の認識の有無にかかわらず、懲役5年以下・罰金500万円以下が科せられます。法人や業者など組織的な違反の場合は、罰金が1億円以下となります。
所定の手続きを経て許認可を得ていなければ、生きている動植物だけでなく、剥製・毛皮・羽毛などの加工品も同様に違法となります(一部の加工品は除かれます)。
遺品整理の現場で時折見受けられる規制対象品としては、象牙、ウミガメの剥製、コート、バッグ、また海外では漢方薬として使用されているものなどがあります。
ワシントン条約の対象となる主な動植物
皆さんにもなじみ深いものを挙げると、キリン・カバ・パンダ・レッサーパンダ・オオカミ・チーター・インドライオン・ジャガー・ユキヒョウ・サイ・ダチョウ・ワニ・ニシキヘビ・アジアアロワナなどがあります。国内では、ニホンカワウソ(絶滅したとされています)・オキナワオオコウモリ・ジュゴン・マナティー・コウノトリ・トキ・ハヤブサ・ウミガメ・リュウキュウヤマガメ・イシガメ・オオサンショウウオ・アカサンゴなどが、絶滅が危惧される・種の保存に緊急を要する動物として指定されています。
弊社にご依頼いただく遺品整理のご依頼者の多くは高齢の方で、ワシントン条約が日本で締結された1980年(今から40年以上前)以前に購入・収集されたものが多く見受けられます。象牙の印鑑なども同様で、規制前に入手したものであれば所持に問題はありませんが、ワシントン条約で規制されている品を無許可で商取引することはできません。
過去の摘発事例としては、長野県でタイマイの剥製を3,300円で売却したケース、広島県でトラの剥製を売買した業者9人が書類送検されたケースがあります。いずれも「知らなかった」では済まされません。
また、別のケースとして、自宅のピアノを海外の親戚に送ろうとしたところ、ピアノの部品の一部に象牙が使用されていたため輸入通関ができなかった事例もあります。ワシントン条約の規制対象品を海外へ輸出する際は、附属書の区分確認と経済産業大臣による輸出許可・承認が必要です。なお、演奏家が海外公演のために楽器を持ち出す場合には、手続きを簡略化した「楽器証明制度」も設けられています。詳しくは、経済産業省貿易管理部野生動植物貿易審査室へ直接お問い合わせいただくことをお勧めします。
このように、「知らなかった」では済まされないのがワシントン条約です。一般廃棄物業者の間でも、細部まで十分に把握されていないのが実情であり、また法律自体が規制強化とともに変化し続けているため、常に最新の情報の確認が必要です。
タイマイの剥製などは行政機関によって対応が異なりますが、行政に確認の上、大型ごみとして取り扱ってもらえる場合もあります。また、希少な剥製(ニホンオオカミ・ニホンカワウソなど)は、売買ではなく大学などの研究機関への寄贈という形で社会貢献につなげることも一つの選択肢です。
処分できない「特別管理廃棄物」「特別管理産業廃棄物」
一般家庭ではあまり排出されませんが、「PCB」「水銀」「燃え殻」「感染性一般廃棄物」などが該当します。
PCBはかつてのテレビやエアコンなどの部品の一部に使用されていました。特殊な化学薬品を保管されている家庭は少なく、発見されることは稀ですが、過去には研究者の方の家屋から大量の水銀が発見されたこともありました。その際は弊社・一般廃棄物業者ともに対応できないため、広島県福山市の専門業者をご紹介し、直接対応していただいた経緯があります。
これらは一般廃棄物の許認可だけでは収集・運搬が違法となるものです。また、遺品整理・特殊清掃の現場でよく発見されるものとして注射器があります。特に糖尿病を患われていた故人様の室内からインスリン注射器が見つかるケースが多く、これらは「特別管理医療廃棄物」に該当し、一般廃棄物業者も法的に受け取ることができません。
ただし、すべての医療器具・医薬品がこれに該当するわけではありません。一つの目安として、ドラッグストアで購入できるものか、病院から支給されたものかで判断できます。病院から支給されたものは直接病院へ返却してください。それでも困られた場合は、専門の遺品整理業者か管轄の行政(役所)にご相談ください。
ご依頼者が気にされることの多いもの
アダルトビデオ
ご依頼者の多くが気にされるもののひとつがアダルトビデオです。ただ、これはあまり気にされる必要のないものの一つです。弊社の施工経験上、老若男女を問わず一人暮らしの方が所有されていることは珍しくなく、特別なことではありません。人には基本的な欲求が複数あり、その一つに性的欲求が含まれることは、健全な人間として自然なことです。ご遺族の方々にも、そのようにお伝えいただければと思います。
なお、遺品整理業者としては、故人様が父親であれば娘さんに、息子さんであれば母親に気づかれないよう配慮して搬出することが基本業務のひとつです。上記はあくまで遺族の方がすでに目にされた後の話ですので、誤解のないようお受け取りください。
どうしても気になる方、目にしたくない方は、業者の搬出方法を事前に確認されることをお勧めします。ビニール袋での搬出では近隣住民の目に触れる可能性があります。段ボールを使用しているか、人目につかない配慮ある搬出を行っているか——こうした点が業者選定の基準のひとつになります。
故人様の下着
故人様が女性の場合、近親者が中身の見えない黒いビニール袋に下着をまとめて入れておられるケースが多くあります。本来、分別作業は細かい確認が求められますが、プロの遺品整理業者であれば、こうした袋の意図を察して適切に対応することが求められます。これは故人様の年齢にかかわらず、よく見られることです。
見積り時にこうした状況を察知し、「女性スタッフ希望」というご要望があれば、それが何を意味するかを即座に理解できなければ、遺品整理業としては成り立たないと考えています。
法律で禁止されているものの処分(銃刀法違反)
銃刀法違反、正式には「銃砲刀剣類所持等取締法違反」は、銃や刀剣類による危害を防ぎ、社会の安全を確保するための法律です。所持・保管だけでなく、譲渡・貸与・借用も規制対象となります。
銃については殺傷能力を有するものに限定されており、市販のエアガンは対象外ですが、違法に改造して殺傷能力が認められるものは銃刀法違反に該当します。また、エアガンに類似するものも抵触する場合があります。不幸にも銃撃被害に遭われた安倍元首相の事件は、その深刻さを示す痛ましい例です。
刀剣類について
刃渡り15cm以上の刀・槍、または刃渡り6cm以上の刃物が規制対象です。包丁などについては、バーベキューなど正当な目的での所持であれば違法にはなりませんが、意味なく持ち歩く行為は銃刀法違反とみなされる場合があります。刀や槍はそもそも人を傷つけることを目的とした武器であるため、厳しく取り締まりの対象となります。
日本刀の発見
歴史ある家屋の遺品整理では、日本刀が発見されることがあります。この場合、各都道府県の教育委員会への登録・保管手続きが必要です。速やかな届け出が求められ、「知らなかった」では済まされません。
保管状態や形状・年代によっては、非常に高い価値を持つ「お宝」になることも珍しくありません。発見から20日以内に「銃砲刀剣類等所有者変更届」を提出する必要があり、費用は6,300円です。手続きが煩雑に感じられる場合は、有資格の専門家に依頼することも一つの方法です。
弊社が尾道市で行った遺品整理では、火縄銃が発見されたこともあります。錆びついて使用できない状態でしたが、銃器であることから所持申請は公安委員会が担当となり、日本刀とは異なり、銃の特性・使用目的などの詳細な分類と精神鑑定書を含む多数の書類・審査が必要となります。
まとめ
遺品整理・空き家整理・特殊清掃において、すべてのものが簡単に処分できるわけではなく、また金銭的価値があるものすべてが「買い取れる」というわけでもありません。本記事がその実情を知っていただくきっかけになれば幸いです。