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コラム

孤独死現場で起きていること

孤独死の初期対応「警察官」

孤独死が発覚した場合、まず救急車や警察への通報が行われるのが一般的です。
その後、事件性の有無を含めた実地検証が行われ、死亡診断書の作成や、血縁関係の近い順に警察から遺族へ連絡が入ります。遺体の解剖・検視から遺族への引き渡しまで、一連の対応を担ってくださるのが警察・警察官の方々です。

特殊清掃の現場では、ご遺族の方々から弊社スタッフへ温かいお言葉をいただくことが多くあります。
しかしながら、その陰でこうした初期対応を粛々と行ってくださっている警察の方々の存在も、ぜひ多くの方に知っていただければと思います。

孤独死の種類

孤独死には大きく「自殺」と「自然死」の二種類があります。

「自殺」は文字通りですが、「自然死」の中にも、ヒートショックや熱中症に起因するものと、腐乱が著しく死因の特定が困難な「不詳の死」とに分かれます。
「不詳の死」については、全国的な監察医の不足により解剖が行われないケースも多いと聞いています。司法解剖率は全警察取り扱い事案の11.8%にとどまっており、古いデータではありますが、広島県3%・島根県9%・山口県6.3%・岡山県6.5%、全国で最も高い沖縄県でも16.6%と、依然として低水準です。

自殺者数は2003年の約35,000人をピークに減少傾向にあるものの、令和5年の統計では約22,000人弱と、10年近く20,000人前後で推移しています。自殺対策基本法に基づきデータが整備され、対策が進められており、特に子どもの長期休暇明けにおける自殺への注意喚起がなされています。

社会全体の自殺要因としては「経済・生活問題」が最も多いとされ、「健康問題」は減少しているという見方もあります。ただ、職業別の視点では有職者の自殺が増加しているというデータも目にしました。私が疑問に感じるのは、「健康問題」の定義がどこまでを指しているのかという点です。「経済・生活問題」を抱える方々も含め、その背景には「心の病」による健康問題があるのではないかと推察しています。

目に見えない病は数多くあります。孤独死の現場すべてではありませんが、いわゆる「ゴミ屋敷」状態の家屋を目にすることも珍しくありません。また、特殊清掃を伴う生前整理においても、ご家族からの「ゴミ屋敷」の整理依頼は多くあります。私は医師ではなく特殊清掃業者ですので断定はできませんが、これらは「セルフネグレクト」の症状と解釈しています。

このように、自らの命を絶たれる方や孤独死をされる方の背景には、「心の病」との深い因果関係があると考えています。

ヒートショックと熱中症

ヒートショックによる死者数は、2019年には約19,000件と20年前の約5倍に増加しています(2025年には厚生労働省よりさらに新しいデータが発表される見込みとのことです)。発症は65歳以上から急増し、11月から2月にかけて多いというデータもあります。

ヒートショックの症状は「めまい」「頭痛」「吐き気」から始まるとされています。このような症状を自覚された場合は、ためらわず119番(救急車)に連絡されることをお勧めします。弊社でも11月〜2月にかけて、脱衣所・浴室・トイレ内での特殊清掃が増える傾向があり、統計データと一致していると感じています。

ヒートショック予防のためには、室内の気温差をなくすことが最も重要です。一般的な住宅では、リビングは南側に配置され、日当たりや採光の関係から暖房も十分に行き届いていることがほとんどです。一方、浴室・脱衣所・トイレは北側に設けられていることが多く、厳冬期は北風や日当たりの少なさにより気温が低くなりがちです。今後の高齢者住宅では、こうした低温箇所への暖房設備の設置が必須になると考えています。

夏場は逆の現象が起こります。地球温暖化の影響により日本の四季も様変わりし、春・秋は短くなり、夏は猛暑日が続くほど気温が上昇しています。暑さを感じにくくなった高齢者が熱中症で救急搬送されたり、孤独死のまま発見されたりする悲しい出来事が後を絶ちません。

物価高が続く中、少子化対策が注目される一方で、高齢者対策もより重視していただきたいと切に願っています。すべての高齢者が富裕層ではありません。行政が現実に目を向け、ヒートショック・熱中症対策に本腰を入れることで、救える命は必ずあると信じています。

孤独死が発見されるまでの傾向

孤独死をされる方の多くはおひとり暮らしの方で、家族・親族とは疎遠になり、近隣との付き合いも薄い方が多い傾向があります。

発見が最も早いのは6月〜10月の夏場です。気温・湿度が高く遺体の腐敗が速いため、異臭に気づいた近隣住民が警察へ通報するケースが多くなります。次いで多いのが、長期連休中に「連絡がとれない」と感じた親族が訪問し、お正月明けに発見されるケースです。

特殊清掃には季節性があり、厳冬期は低温のために遺体の腐敗が進みにくく、特殊清掃が不要なケースもあります。ただし、暖房の効いた室内やこたつの中では腐敗の進行が早まることもあり、厳冬期でも重度の特殊清掃を要するケースが稀にあります。

厳冬期の孤独死と特殊清掃

厳冬期の特殊清掃は、夏場のそれとは求められる経験値やスキルが大きく異なります。なぜなら、人が「不快な臭い」として感知しにくい環境であるため、現場の「見極め」と「見立て」が非常に難しくなるからです。

具体的には、ご遺族からの発見時の状況のヒアリング、体液の浸潤範囲の特定、そしてその体液が腐敗によるものか・アンモニアなどの尿によるものかを正確に見極める必要があります。これを誤ると、梅雨の時期になって腐敗臭が「臭い戻り」として発生する事態を招きます。

もし不要な箇所まで処理したり、必要な処置を見落としたりすれば、後々クライアントに多大なご迷惑をおかけすることになります。とりわけ賃貸住宅では、内装を張り替えた後に臭いが再発した場合、取り返しのつかない事態になりかねません。臭気源の浸潤範囲と成分を的確に想定した上で作業を進めることが、冬場の特殊清掃における最重要事項です。

孤独死による影響と「被害者」

孤独死は、故人やご遺族だけでなく、周囲の多くの方に影響を与えます。

近隣住民の方々は、「洗濯物が干せない」「苦情を言いたいけれど言い出しにくい」「気の毒で…」と複雑な思いを抱える、いわば「被害者」でもあります。賃貸住宅では大家さんも同様で、一般的な退去とは異なり、特殊清掃と臭気除去・修繕が完了するまで次の入居者を募ることができません。

また、賃貸契約の保証人となられている方も影響を受けます。保証人になる際、孤独死を前提としている方はほとんどおらず、あくまで家賃に対する保証として引き受けた方が大半のはずです。しかし実際には、原状回復工事費用や場合によっては家賃保証まで請求されるケースが多く、そのような事例を数多く目にしてきました。

このように、孤独死は関係するすべての人々に金銭的・精神的な被害をもたらします。

孤独死の臭いとトラウマ(記憶臭)

臭いの感じ方には個人差があり、男女間・親子間でも異なります。

たとえば、父・母・長女・長男の家族構成において「単身赴任中の父親が突然孤独死をし、1カ月後に発見された」と仮定した場合、最も臭いに敏感に反応するのは誰でしょうか。私の経験では、娘である長女ではないかと推察しています。これは近親相姦を防ぐためにDNAが強く働くためと言われており、親子関係にある場合に特に顕著です。

こうしたケースでは、重度のトラウマ現象(記憶臭)が生じることがあります。トラウマとは「心的外傷」であり、強烈な精神的・身体的ショックを受けた際の記憶が、突然フラッシュバックする現象です。孤独死の現場に遭遇された方々の場合、その時の臭いが記憶とともに繰り返しよみがえってくる症状として現れることがあります。

まとめ

孤独死は、命を失う本人だけでなく、周囲のすべての人を不幸にします。

私は「孤立死」という言葉を使われる方の存在も知っていますが、これまでに数多くの現場で施工を行ってきた立場から申し上げると、この問題は30年前から叫ばれてきた「少子化」「高齢化」「核家族化」の必然的な帰結が、今まさに社会現象として表れているものだと考えています。

「孤独死」という言葉の起源は、今からちょうど30年前の1995年、阪神・淡路大震災の頃にまで遡ります。昭和の時代には、この言葉を認識している人は少数でした。

昭和の時代をすべて肯定するわけではありませんが、当時は地域コミュニティが自然に形成されており、近所のAさんが「具合が悪い」「めでたいことがあった」といった情報が自然に共有される、厳しくも思いやりのある社会が存在していました。だからこそ、当時の私の周囲では「近所の方が孤独死した」という話を聞いたことがありませんでした。

スマートフォンの普及により生活は便利になりましたが、便利になり過ぎた弊害として、人と人との関係が機械的に希薄になってきているように感じます。昨年オーストラリアでは16歳未満を対象にしたスマートフォン規制が制定され、世界的に議論を呼んでいます。良し悪しは様々な見方がありますが、使っているのはあくまでも人間です。要は「使い方」の問題ではないでしょうか。

「AIの時代」とも言われる現代ですが、AIで孤独死を防ぐことができるでしょうか。今や便利なツールが特殊詐欺や闇バイトといった犯罪に悪用され、多くの高齢者が恐怖に怯え、死傷者まで出ている状況です。昭和のような地域コミュニティがあれば防げた犯罪も、少なからずあったのではないかと思います。

孤独死も毎年増加し続けています。孤独死も特殊犯罪も、「より深い人と人とのつながり」によって抑止できることがある——そう信じ、願っています。

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