コラム

遺品整理と特殊清掃：作業前後の「心の配慮」が最も重要

遺品整理と特殊清掃は、どちらも故人様が残された品を扱う仕事ですが、作業を依頼されるご遺族の心理状態や、現場で必要な配慮は大きく異なります。

ここでは、それぞれの作業特性に基づいた、ご遺族への「心の準備」と「現場への配慮」について解説します。

特殊清掃が必要な現場は、ご遺族にとって心理的な負担が非常に大きい場所です。

ご遺体の発見者や近しいご遺族は、現場の状況をフラッシュバックさせ、精神的なショック（トラウマ）を抱えておられることが少なくありません。

特殊清掃業者の最も大切な役割は、まずご遺族の感情を守ることです。「忘れたい現実」に直面させないよう、原則としてご遺族が現場に立ち入ることを避け、現場確認や進捗報告は写真などの記録を通じて行うといった配慮が必要です。

特殊清掃では、臭気の拡散防止が非常に重要です。遺品整理とは異なり、近隣住民は孤独死に起因する異臭を少なからず感じ取っています。

　・近隣の心情を察する: 住民の方々は「気の毒だけど、洗濯物に臭いが付いた」「室内に臭いが入ってきた」という、複雑な心情を抱えています。

　・苦情への誠実な対応: 業者に直接苦情が寄せられた場合、これを傾聴（丁寧に聞き取る）し、「ご迷惑をおかけして申し訳ない」と誠実に接することが重要です。この配慮が欠けると、苦情がご遺族に伝わり、さらなる精神的な負担を強いることになります。

特殊清掃のスキル（消臭技術）は、こうした「ご遺族と近隣住民の心情を守る」という配慮の基礎の上に初めて成り立つものです。

遺品整理は、ご遺族の「故人様への想いを忘れたくない」という感情を前提に進める必要があります。

　・残す品物の確認: 遺族にとって、故人の残した品々はすべてが「思い出の詰まった貴重品」です。単なる不用品として処理するのではなく、ご遺族の故人様への「想い」や「思い出」を前提に、残すべき品、処分すべき品を確認していただくことが最も重要です。

　・故人のメッセージ: 故人様が遺品を通じて伝えたかった「想い」をご遺族に客観的に伝えることや、複雑なご家族の状況に応じて、ご遺族一人ひとりの気持ちに寄り添った対応を行うことが、遺品整理のプロに求められる資質です。

特殊清掃や遺品整理を依頼されるご遺族は、大きなストレスやショックを抱えています。その反応は大きく分けて二極化する傾向があります。

　・無口になられる方: 精神的な疲労やショックで、あまりお話をされない方。→ そっとしておき、必要最小限の連絡に留める配慮が必要です。

　・極端に多くお話をされる方: 気持ちの整理がつかず、様々な話をしてしまう方。→ 時間をかけて傾聴し、心に寄り添うことが、ご遺族の気持ちの整理を手伝う重要な工程となります。

遺品整理・特殊清掃の専門業者は、単に物を片付けたり臭いを除去したりするだけでなく、ご遺族の心の状態を察し、「傾聴力」と「誠実さ」をもって接することが最も大切だと考えます。